投稿日時:2025/11/27 16:02
投稿者:人妻 紫乃さん
紫乃の部屋は、夜になると静かすぎるほど静かだ。
家のどこからも声がしない。
時計の針の音だけがやけに大きく響いて、
そのたびにひとりでいる寂しさを思い知らされる。
でも――
その静けさは、紫乃の身体をゆっくりと別の方向へ追い詰めていく。
ソファに腰を下ろすと、
身体の奥に眠っていたはずの熱が、
ふっと呼吸みたいに立ち上がる。
「…またこんな気持ちになってる」
誰に言うわけでもないつぶやきが、
薄暗い部屋に溶けていく。
紫乃は、そっと自分の脚を寄せたり、開いたりしてみる。
ただそれだけで、
布越しの小さな摩擦が全身に走って、
思わず肩で息をついてしまう。
触ったわけでもない。
求めたわけでもない。
それなのに、身体の中心が脈打つように熱くなる。
「やだ…こんなに反応してる」
指先をそっと太ももに置く。
触れていいのはそこまで。
それ以上は、名前にした瞬間に堰が切れてしまいそうだから。
でも、太ももに置いた指先が微かに震えるたび、
その震えが、まるで“もっと奥へ誘われている”ような錯覚を呼び起こす。
紫乃は目を閉じた。
暗闇の中で、自分の身体の温度だけが鮮明になる。
夫の冷たい背中。
触れてもらえないまま積もった渇き。
満たされない夜が増えるほど、
紫乃の身体は逆に敏感になっていった。
「…どうして、誰も気づいてくれないの」
指先は太ももに置いたまま。
でも、太ももがこんなに熱を帯びているのなら、
その少し奥はどれほど切なく求めているのか。
想像してしまった瞬間、
腰がわずかに浮いた。
「だめ…考えただけで…」
もう触れていないのに、
まるで誰かの手がそこにあるような錯覚に全身がとろけそうになる。
胸のあたりが上下に波打つ。
呼吸が追いつかなくなる。
脚が落ち着かず、ゆっくり擦れるように動く。
ただの無意識の仕草なのに、
“してはいけない時間”に触れてしまったような甘い罪悪感が紫乃を包む。
「あぁ…苦しい…」
苦しいのに、離れられない。
欲しいものには触れないまま、
その“手前”だけをさまよい続ける。
触れたい。
確かめたい。
でも、触れられない。
だから余計に疼く。
何もしていないのに、
全身が震えるほど切なくて、
涙がでるくらい満たされない。
紫乃は腕で顔を覆いながら、
身体の奥にせり上がる熱にじっと耐えた。
静かな部屋で、
自分の鼓動だけがやけに大きく響く。
そしてまたひとつ、
誰にも言えない夜が始まっていく――。

